父がその子を抱き抱えてもどってくるではありませんか・・・

「お父さん!」

私は驚きのあまり大きな声を出しましたが、父は何ごともなかったかのように、松葉杖をついてさっさと歩いていきます。

「お母さんお母さんも見たでしょう?お父さんが走ったのを!」

母は淡々と答えました。
「驚かないで、聞いてちょうだい。
いつかはあなたにもわかってしまうと思っていたわ。
お父さんはね、本当は松葉杖がいらないの、あのとき、お父さんは腕に怪我しただけだったの。
それでも4年間、松葉杖を使ってきたのよ。
同じ痛みを背負わなければ、あなたを慰めてあげらないといってね」

知らず知らずのうちに涙が溢れてきました。

「泣かないで。
お父さんはね、あなたを慰めてあげられる自分を誇りに思っていたのよ。
さっきは、あの子が車にひかれそうになって、あなたと同じ目に遭うんじゃないかと・・・」

前を歩く父の後ろ姿を見ていると涙がこぼれ落ちてきました。


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